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FASHIONABLE

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君の恋人は、どこにある?

恋人を殺したことを、男はあっさりと認めた。
怯えているわけではなく、悟ったわけでもなく、かといって罪の意識に苛まれている様子もなく。
取り調べの最中、彼が初めて言葉に詰まったのは、犯罪の動機を聞かれた時であった。


 


あー、なんといえばいいのか。
動機を話したくないわけではなく。
そうだな、、、誰しも、心のうちに熱を持っているだろう。
だけどもそれを、意識的にじっくりと眺めて、自らの蓄えた言葉を用いて口にしてしまえば、なんとも矮小で、自分自身でも侮蔑されてしまうようなつまらない欲望に変わってしまうことに抵抗を覚えただけだ。

 


つまり、正確な動機というものを全て吐露するのは、困難なのだけれど、もっともそれらしいことを言うなら、どうしようもなく愛した人に、抱きしめられたかった。
そんな平凡な願いの何が問題かといえば、愛した人を殺さなきゃいけないことだったんだろうな。

犯罪性愛というモラル的なものでもなく、性的な欲求でもない。
殺さないと、私を抱きしめることができないんだ。
体の一部が重なり合うだけじゃダメなんだ。
それは、お互いの表面の、接触でしかない。
私が求めていたのは、恋人同士の交わりでもなく、母の腕の中で眠る子供でもなく、無条件の愛のようなものでもない。
寒くもないのに震える体を、すべて包み込むように抱きしめてほしかった。

きっと、震えているのは肉体としての体だけでなく、内面的なものも満たされたかったんだろう。
けれど、他人には私の内面まですべて見透かす事などできない。
震えている私の全てに触れ、体温を届けることなどできない。


 

だとしたら、方法は一つしかないだろう。
俺の全てを抱きしめてくれるように、愛してやまないその人の外側と内側を一緒くたにした。

ガラス細工のような人差し指と肋骨や、ホットミルクの幕のように白く不安定な首筋の皮、足の筋肉、透き通った血、部位の認識もできなくなった内臓、とにかく全部だ。
全部を、一緒くたに混ぜたんだ。

ずっと抱きしめてもらえるように、そいつに洋服を浸して、顔の皮だけ背中に乗せて、俺を抱きしめてもらえるように、彼女らを加工したんだ。

あーだから、もっと単純な事を言うなら、殺した動機は、愛した人を着るためか。


そういって男は、話を終える。


じゃあ、君の恋人は今、どこにあるんだ?


さあね。
なんとなくわかっていたけど、そんなんじゃ満たされなかったから、売っちゃったよ。
それから、そんな一世一代の大仕事、なんの下準備もなしにできないだろう。
だからそれまでに呆れるほどたくさんの試作品を作ったからなぁ。

どれがアレだったかももうわからない。

制作裏話

非常にファッショナブルな、ファッショナブルすぎる男の話です。

フロント側のデザインでは、クローゼットの中の服を選ぶ男を単色で抽象的に描き、
バック側のデザインでは、そのクローゼットの中身と男の対象者になったであろう被害者の怨念を足して、ストーリー自体のサイコパス的行動を明瞭に描くことで、
フロント側とバック側のデザインが対照的になるように構成してみました。

表面的に関わる分や、一見するとなんの害性もない普通もしくは潔白そうな人ほど、実は一般人からは想像できない裏側を持ち合わせているのが、皆さんが簡単にイメージできるサイコパス像かなと思います。

フロント=シンプル&抽象的、バック=明瞭で具体的の対称性を持たせた理由は、誰しもが単純に想像できるサイコパス像を表したかったためです。
バック側の「FASHIONABLE」のタイトルは、男が洋服を作る過程を表現したくて、痛覚を感じるような生々しい肉感の装飾を施してみました。


そもそもの原作とデザインの発想は、SNSでのフォロワーさんとの交流や、出店時のお客さんとの会話の中で、シリアルキラーを描いたホラー映画(一例ですが、羊たちの沈黙シリーズ、テリファー、ヘンリー、屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカなど)を好む方が多いなと感じたことがきっかけです。
世界観や表現内容としては、JOKERなどもありますね。

ただのサイコパス的な殺人鬼を作っても面白みがないので、どこか共感しかけてしまうような人間の弱さの側面を織り交ぜて、キャラクター性とストーリーの軸になる行動の解明を端的に表してみました。
ビジュアルもストーリーも、映画として観てみたくなりませんか?
映像、映画関係者の方、これを読んでいて興味があったらぜひ教えてください。


THIRST」の解説でも少し触れましたが、感情を持った人間が多数存在している以上、人の特性としてマジョリティとマイノリティの2種類に分かれてしまうことは絶対だと思っています。
定義からはやや外れると思いますが、サイコパスは要はマイノリティ側です。
もしマジョリティ側とマイノリティ側の立場が逆転して、このファッショナブルな男が普通とされる社会になったら、どんな世界になるんでしょうか。
サイコパス人間が溢れる社会を描いたような、そういう映画とか話ってありましたっけ?ホラーコメディーになりそうですが、次はそんな物語を作っても面白そうです。



#舞台設定
 現代、警察の取調室


#キャラクター設定
 検事と、おしゃべり好きな殺人鬼


#アクション
 人間の洋服

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COLLECTION

2023 1st Collection

UNREASONEDの世界観を確立する初のコレクション。
6つの物語を書き下ろし、TシャツとロングスリーブTシャツを中心に、全10種類の春夏物の商品を揃えました。
日々のコーディネートに合わせ、あなただけのホラーなファッションをお楽しみください。

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2023 2nd Collection

1st Collectionから原作数を増やし、新たな8つの物語と、全10種類の商品を揃えました。
どんな季節でも着回せるパーカーやスウェット、ロングスリーブTシャツなどの秋冬物をメインに、オーバーサイズなシルエットで展開しています。

2024 1st Collection

UNREASONED以外のアーティストと共同で作品を作り上げる「Paradox Series」から、24 1st Collectionをリリース。
SUGGESTIONS、DOWNED、paleなど国内メタルコアシーンを中心に音楽活動を行うボーカリスト「NiiK ScRipT」とのコラボ作品として、2作品を展開。

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2024 2nd Collection

これまでのUNREASONEDを昇華させた新たな6つの物語を揃え、3作品を先行公開。
後日に新しい3作品を公開予定。

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UNREASONEDとは、漠然と感じる恐怖や不安、ある事象から連想してしまう怖い想像をもとに、ホラーな世界を創造するクリエイティブプロジェクトです。
アパレル、メディアを中心に、イラストレーション・グラフィック・映像・音楽・ファッションなど、
様々なクリエイティブ領域からホラーな世界を発信して、新しいカルチャーの創造を目指します。

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